過敏性腸症候群とストレス性胃炎に、漢方とツボ治療(SSP療法)の併用をおすすめします。
図は胃経を表し点はつぼ(経穴)を実線は経絡を示しています
東洋医学には2000年の歴史があり、その治療法の根幹には「つぼ(経穴)」と「経絡」という考え方が存在します。 古代中国の医学書『黄帝内経霊枢』には、「十二経脈は人が生まれ、病が生じ、人が治る所以である」と記されており、病気の発生と治療がこの経絡と深く関わっていることを示しています。
過敏性腸症候群(IBS)とストレス性胃炎がある場合、特に「足の陽明胃経」という経絡上に圧痛点や結節(しこり)が見られます。 東洋医学では、これがつぼ(経穴)であり、鍼灸治療を施すことで症状の改善を図ります。
また、どの経絡に異常があるかを特定することで、治療に用いる漢方薬の選択が可能になります。 例えば、その経絡が胃経にある場合は、六君子湯(りっくんしとう)や四逆散(しぎゃくさん)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などが選択されます。
過敏性腸症候群(IBS)とストレス性胃炎にツボ治療と漢方を併用することで、単独での治療よりもすぐれた効果を期待できます。
科学的根拠にもとづくツボ治療と漢方治療の効果
過敏性腸症候群は、鍼灸治療が有効な疾患の一つと考えられています。 これを裏付ける二つの論文をご紹介します。
1. 鍼(はり)治療の有効性
英国のHugh MacPherson氏らが発表した論文¹では、鍼治療の過敏性腸症候群に対する有効性が示されています。
- 研究内容: 過敏性腸症候群の患者を対象に、「鍼治療」と「通常治療」の効果を比較し、治療終了後12ヶ月間追跡調査しました。
- 結果: 下のグラフが示す通り、鍼治療を受けたグループ(実線緑色)は、通常治療のグループ(破線赤色)と比較して、治療終了後3ヶ月から12ヶ月後の全ての時点において、症状の重症度スコアが有意に低く、優れた改善効果が持続しました。
- 結論: 論文では、「鍼治療は過敏性腸症候群の症状を改善し、その効果は治療終了後12ヶ月経過後も持続する。 特に従来の治療では改善が難しかった難治性の患者においても効果が見られ、鍼治療は検討する価値のある選択肢である」と結論付けています。
針治療終了後の過敏性腸症候群重症度 スコアの推移
出典¹: Acupuncture for irritable bowel syndrome: primary care based pragmatic randomised controlled trial Hugh MacPherson, BMC Gastroenterology volume 12, 150 (2012
グラフでみると鍼治療終了後の3ヶ月~12ヶ月後まで効果が通常治療よりも続いていることを示します。
2. 灸(きゅう)治療の有効性
Chunhui Bao氏らが発表した別の論文²では、下痢型の過敏性腸症候群に対する灸治療の長期的な効果が報告されています。
- 研究内容: 患者を「お灸治療」を受けるグループと、「偽のお灸治療(形だけの治療)」を受けるグループに分け、治療後24週間にわたって効果を比較しました。
- 結果: 下のグラフが示すように、お灸治療グループ(実線青色)は偽治療グループ(破線赤色)に比べ、以下の項目で有意な改善を示し、その効果は治療終了後24週まで持続しました。
- 総合スコア
- 腹痛の重症度
- 排便習慣への満足度
- 日常生活への支障度
- 腹部膨満感
- 結論: 論文では「灸治療は腹痛、下痢、便意切迫感を改善し、QOL(生活の質)を高める。 これらの好ましい効果は治療終了後24週間まで維持された」と述べています。
出典²: Long-term effect of moxibustion on irritable bowel syndrome with diarrhea: a randomized clinical trial Chunhui Bao Therapeutic Advancesin Gastroenterology February 23, 2022
3. 刺さない鍼治療SSP療法(低周波治療)
当院はツボ治療として鍼灸と同等な作用効果のあるSSP療法をおこなっています。SSP療法は刺さない鍼治療です。
SSP療法は対のSSP電極をツボに置き、低周波通電をツボ表面に約20分します。
SSP電極
SSP療法の発想
SSP療法は、中国の針治療をベースに、大阪医科大学麻酔科によって「刺さない針治療」という発想から開発された治療法です。ツボ刺激の効果も研究者の間で広く知られ、安全な痛みの治療法として整形外科、内科等で使用されてきました。
SSP電極について
SSP電極はコマのような形をしていますが、この形状に効果的にツボを刺激する秘密があります。
円錐の先端は90度の鋭角でツボを有効に圧迫できるように工夫されており、この圧迫効果は安定性・持続性に優れ、他の電極にない特徴といえます。また、電極は吸引カップの中に格納され、皮膚に置くだけで簡単に固定ができます。
電極の材質は真鍮に銀メッキを施したもので、電流が流れやすくなっており、電流が電極先端部に集中し、針で皮膚を刺激したときと同じような刺激を加えることができます。
SSP療法の利点
「刺さない針」のSSP療法は、鍼治療にはない利点があります。
針治療と違って痛みがありません。そのため幅広い層の患者さんに安心して治療を受けていただけます
刺さないので感染の心配がありません。
日本メディックスssp療法より転載
4. ストレス性胃炎に使用する漢方六君子湯の効果について
胃経の経絡に不調が起きると 胃経の働きの消化・吸収に次の症状が発生します。
- 食欲不振、胃の膨満感、消化不良
- 嘔吐、げっぷ、胸やけ
- 疲れやすい 倦怠感
この胃経の症状を改善する漢方薬に六君子湯があります。
富永等は六君子湯の有効性について報告³しています。
「上腹部症状に対する六君子湯の効果 機能性ディスペプシア(ストレス性胃炎)患者における検討」のなかで、下記の表に見られるように、六君子湯使用は、8週後の患者評価による全般的な治療効果をみとめました。
六君子湯使用による全般改善度の表
出展³: Tominaga, K. et al. Neurogastroenterol Motil. 2018, 30,
5. 過敏性腸症候群に使用した漢方同謝耀芳TXYFの効果
伝統中国医学(TCM)の漢方薬 同謝耀芳TXYF は何百年もの間、中医学の言葉で肝脾の気の異常による腹痛に対して使用されてきまし た。中医学の言葉で肝脾の気の異常による腹痛とは現代医学では過敏性腸症候群の別名と考えらえます。
M・チェン等は「下痢型過敏性腸症候群患者に対する同謝耀芳顆粒とプラセボの比較」のなかで「TXYF群は腹痛、膨満感便,下痢回数など、いくつかの項目でも改善を示しました。興味深いことに、同謝耀芳XYF治療の効果は、薬投与期間を数週間過ぎても持続しました。」と述べています。
以下その論文4の結果をみてみましょう。
TXYFT使用がPlaceboより腹痛は減少し、治療終了後も改善が続いています。
TXYFT使用がPlaceboよりも 腹部膨満感は減少し治療終了後も改善が続いています。
TXYFT使用はPlaceboより下痢回数は減少し、治療終了後も改善が続いています
以上3個のグラフにみられたように、漢方薬 同謝耀芳TXYF は Placeboよりも腹痛、腹部膨満、下痢に関して治療効果があり、 治療終了後も効果が続いています。
出展 4:Alimentary Pharmacology & TherapeuticsVolume 48, Issue 2 pp. 160-168 M. Chen, et al.
中国漢方薬の同謝耀芳の報告についてみましたが、当院ではツムラ漢方を使用して、そのひとの症状に合った漢方薬を使用しています。
また漢方での治療のみならず、上記のSSPによるツボ治療を同時にお勧めしています。漢方とツボ治療の併用療法で、漢方単独よりも良い効果がえられます。
まとめ 過敏性腸症候群とストレス性胃炎でお悩みの方に漢方とツボ治療(SSP療法)のおすすめ
これら4つの論文が示すように、つぼ治療(SSP療法)と漢方薬は、過敏性腸症候群、ストレス性胃炎に対して有効な治療法です。
当院では西洋医学の治療ではなかなか症状が改善しないとお悩みの方に、漢方薬とつぼ治療(SSP療法)を併用した治療をお勧めします。
